発がん過程に関わる現象として放射線被ばく後、遅延性にしかも偶発的に生じるゲノム不安定化に着目している。マウス個体において、被ばく6週間後に神経幹/前駆細胞でみられるDNA2本鎖切断(DSB)の感受性を、マウス胎児期、新生児期、成熟期被ばくで比べると、新生児期(<3日齢)が最も感受性が高いことを明らかにした。遅延性DSBが生じる原因は、放射線によるゲノム不安定化にあると考えている。
神経発生には、多数のDNA2本鎖切断(DSB)が発生する過程があり、そのDSBを修復することが正常な神経発生に必須であることを示す。そのために、主要なDSB修復機構である非相同末端結合においてDNA切断端の結合に働くDNAリガーゼⅣの変異マウスを用いて、DSB蓄積と神経発生障害の関係を明らかにする。
被ばく染色体が不安定であることを染色体移入実験で明らかにした。その原因として被ばく染色体に遅延性のDNA2本鎖切断が生じる可能性について、移入染色体に人為的にDSBを誘発する実験システムを利用して検討する。
放射線によって誘発されるテロメア損傷によりテロメア不安定化が生じる可能性を検討する。テロメア反復配列を標的としたテロメアFISHシグナルを指標として、放射線被ばくによるシグナル数の増減やテロメア姉妹染色分体交換(T-SCE)への効果を明らかにする。
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